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vol.41

京都大学 古阪秀三先生を迎えての社内勉強会③

2014/12/24

さて、今回のメールマガジンは、京都大学大学院工学研究科の古阪
秀三先生を講師にお迎えして9月に実施した「アクア社内勉強会」
の内容からの3回目、完結編をお届けいたします。

アクア・メ―ルマガジン2014年の配信は、今回がラストです。

古阪先生をお招きしてのアクア社内勉強会はこの12月にも実施い
たしましたので、その内容についても、年が明けにあらためてお届
けしたいと考えております。ぜひご期待ください。

------AQA MAIL MAGAZINE-------Vol.41 ------

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建築、構造、設備、積算・コスト、設計事務所の選定、FM・建物
収益改善計画ならびに法律的な側面も含めた発注方式のアドバイス
等、各分野の専門担当者がみなさまのご相談にお答えいたします。
ぜひ、下記URLまでお気軽にアクセスしてください。

■アクア相談室 http://aqa-pm.co.jp/sodanshitsu/

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京都大学 古阪秀三先生を迎えての社内勉強会③
[講師]京都大学大学院工学研究科 古阪秀三 先生
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【古阪秀三 先生 プロフィール】
1951年生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。清水建設での実務経
験を経て、京都大学工学研究科准教授。この間、日本CM協会会長、
建専連外部理事、建設産業戦略会議委員など。建築生産社会の刷新・
国際化、技能労働者の処遇改善などに一貫して強い関心を持ち、教
育・研究・実践活動を展開している。1990年 日本建築学会奨励賞
(論文),1999年 日本建築学会賞(論文)。

写真紹介
http://aqa-pm.co.jp/workshop/pdf/conference.pdf
『第1回国際発注・契約研究会議』
(これ以降毎年キャンパスプラザ京都で開催しています)

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「もの決め」と図面
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私は、常日頃から建築物をつくる行為の実態と法制度・契約慣行の
ずれの中で生じた「もの決め」にはらむ問題を取り上げています。

例えば、「もの決め」の対象となる「工事費」。

日本では、発注者から依頼を受けた設計者は正確な「工事費」を算
出できません。また、正確な工事費を算出することは建築士法や建
築基準法などの法律でも責任が課されていません。契約によって
「正確な工事費を算出する」を約束しておれば、その限りにおいて
責任があることになります。

一方で、工事を受注した建設業者は設計者が描く意匠図面、設備図
面、構造図面を基にして建設業者が詳細図を描きますが、発注者の
ために「工事費」を算出することはありません。建設業者が算出す
る工事費は、当該工事を受注するために入札なり見積もり合わせな
りに提出する資料とするためです。

もちろん、工事を特命等で受注しておれば、設計段階で概算の工事
費を必要に応じて算出することは可能です。このように「工事費」
を誰の責任でいつ算出するのかは、法律と契約のはざまであいまい
になっています。

ちなみに、設計者が描く図面を基にして建設業者が詳細図を描くの
は、設計者支援でもありますが、もの決めを早めること、工事の実
行予算を正確なものにすること、専門工事業者への発注・指示に活
用することなどのためであり、その図面によって、建設業者は専門
工事業者との契約も確定させます。

本来、発注者は設計段階からの精度の高い工事費予測を望んでいる
はずでが、日本では設計者に精度の高い工事費の予測を行う義務は
ありません。また設計者にそれを求めることも難しい状況がありま
す。

しかし大事なことは、このような状況であることを発注者が認識で
きていないことです。できるだけ正確な工事費の算出を設計段階で
求めるのであれば、契約でそれを要求すること、あるいは専門のコ
ンサルタントを雇うことが必要になるのです。

一方、海外ではどうでしょう。
シンガポールにおいて建設業者は図面を描かず、専門工事業者が設
計図面から直接描くことが普通です。これは、イギリスの教育制度
が影響しています。

ではイギリスではどうかと言えば、アーキテクト(建築家)という
存在があります。
アーキテクトは、日本の設計者とは役割も地位もまったく異なりま
す。

イギリスでは、アーキテクトは医師や弁護士とならんで、もっとも
社会的地位の高いプロフェッションであり、イギリス王室が認めた
協会から付与される資格です。日本の建築家が自分のことを「アー
キテクト」と英訳することがありますが、これはイギリスのアーキ
テクトの位置づけを考えれば、まったく違うことになります。

日本では建設業者が描いている図面を、イギリスではアーキテクト
が描き、その完成度の高い図面をもとに専門工事業者が施工図面を
描くことになります。アーキテクトが描く図面の部分は、CMも手
を出すことができず、設計者であるアーキテクトがすべての責任を
取らなければなりません。

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発注者が考えるべきこと、ゼネコンが考えるべきこと
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日本のゼネコンは、日本国内では優秀な技術と品質確保のしくみを
持っています。またそれを使いこなす経験と情報を持っています。
その結果として、安全で品質の良い建築物を一定の利益とともに獲
得しています。

そして海外の市場においても、同様の方法で活用し、利益を獲得し
ようとしています。

しかしそこには日本のやり方ではない「しくみ」が多様に存在し、
品質・価格・工期等の厳しい競争がそれらの「しくみ」の間で展開
されています。

海外の建設現場において、日系の発注者が望む「品質は日本国内並
み、価格は現地並み」に応えるため、せっかく日本の建設業者が
「日本国内と同じ建設生産のしくみ」を持ち込んだとしても、実際
は価格のみの競争を強いられるような状況に直面します。

発注・契約方式を検証することでわかってきたことは、今後、その
発注・契約方式に関する戦略を考える重要性が極めて高くなってき
ているということです。

日本は海外と違い、建設発注に関しては様々な発注方式がありませ
ん。発注・契約制度についても特段の変化はなく民間ではほぼ一つ
の契約約款に則って実施され、建設工事関与者の役割/責任分担は
あいまいなまま推移しています。

日本の発注者は「国内外ともに日本のゼネコンの多用でいいのか」
例えば、「海外ではQCD-品質、コスト、工期のいずれを重視す
るかによって発注先を変えることを考えなければならないのではな
いか」ということ。
一方、日本のゼネコンは「どの国にも日本の「しくみ」を持ち込み、
しかも一括請負方式一筋でがんばることがいいのか」ということで
す。

たまには巨大な技術力を生かして技術のノウハウを売る、それを使
いこなすマネジメント力を売り込むなど、「何を売るのか」というこ
とをもう少し考えていかなければならないのではないでしょうか。
(了)